2016年7月9日土曜日

サイドサドル

この街には年に一度の大きなお祭りがある。スタンピードという名前のロデオだ。それの開幕を宣言するのは、ダウンタウン中心を練り歩くパレードだ。今年のそれは、七百を超えるグループを数え、延々と二、三時間も続いた。好天に恵まれ、ついカメラを引っ掛けて見物に出かけてきた。

パレードは、さまざまな団体や会社によって各自に演出されるもので、言葉通りの多種多彩だった。手作り感溢れる幼稚で素朴なものを微笑ましい思いで眺めてみたら、そのつぎには長い列を成す軍人が闊歩し、りっぱな戦車が暴れだす。なんとも楽しい。その中には、まったく予知せず、知識ゼロのものも現われたりして、意外と知的な刺激を覚えたものもあった。例えば右の写真。颯爽とした美人の乗馬姿に感嘆して眺めたら、体を捻って左側に向かって馬上に座ったのを確認して、あっけに取られた。なにかの一時の戯れとしか思えなかった。しかしながら、同じグループのメンバーたちを見れば、女性たちは全員この乗り方をしていて、しかもいずれも古風な身なりをしていて、いかにもエレガント。これにはきっとしっかりした伝統に則っているものだと気づいた。調べて見ればたしかにその通りだ。古い記述は古代ギリシアの文献まで遡り、しかも現代ではイギリスの女王がこの格好をした写真がウェキペディアに掲載されている。通称は「サイドサドル」、この乗り方と、これのための鞍の両方を指す用語である。

ちなみに「サイドサドル」にたどり着くまでの経過を記しておきたい。この乗り方はきっとヨーロッパ的なものだと予想し、英語で「乗馬の姿勢、両足を同じ側」と漠然した言葉を入れてネット検索したら、一発でこの用語がヒットされた。一方では、同じ言葉を日本語で入れると、とても同じ結果には繋がらない。曖昧検索の実力と、言葉の違い、この二つのことを具体的に示した得難い実例だった。


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